このイヤホンの一番の特徴は、「できること」ではなく「あえてできなくしたこと」かもしれません。
同じNothingグループのカナル型「Nothing Ear (3a)」には、通話や再生中の音を録音して文字起こしまでできる機能が載っています。便利そうに聞こえますが、海外のレビューでは「会話を録音する? なぜ?」という戸惑いの声も少なくありませんでした。
そこへ出てきたのが、サブブランドCMFの CMF Clip Pro。録音機能を積まず、LDACとNothingらしいデザインだけを残して12,800円という、実に潔い一台です。
とはいえ、気になるのはそこではないはずです。
- イヤカフ型って、音漏れしないの?
- 1万円台前半で、音はちゃんと鳴るの?
- 走っても落ちない?
2026年8月15日に発売されたばかりで国内の実使用レポートはまだ少ないため、海外の先行レビューと公式スペックから、この3つの疑問に絞って検証していきます。
3行でわかる CMF Clip Pro
- 「聞き逃したくない人」のための道具 … 耳をふさがない構造で、インターホンも子どもの声も宅配便のノックも聞こえる
- 10.8mmという大口径がイヤカフの弱点を補う … クリップ型としては大きめのドライバーで、スカスカになりがちな低音を確保
- ただし万能ではない … 交通量の多い道では音量不足を感じるという指摘あり。ここが最大の弱点
まずスペックを確認:Nothing Ear (3a) との比較表
同価格帯で迷いやすい兄貴分と並べます。
| 項目 | CMF Clip Pro | Nothing Ear (3a) |
|---|---|---|
| タイプ | イヤカフ(クリップ)型・オープンイヤー | カナル型 |
| 発売日 | 2026年8月15日 | 2026年7月7日 |
| 価格 | 12,800円 | 15,800円 |
| ドライバー | 10.8mm デュアルマグネット | ― |
| ノイズキャンセリング | 非搭載(構造上不要) | 搭載 |
| 対応コーデック | LDAC / AAC / SBC | LDAC 対応 |
| 通話・再生音の録音 | 非搭載 | 搭載(文字起こし対応) |
| 通話性能 | クリアボイステクノロジー(HDマイク4基+VPU) | HDマイク |
| バッテリー | 約32.5時間(ケース併用) | ― |
| 装着感 | 耳をふさがない | 耳をふさぐ |
**同じLDAC対応で価格差は3,000円。**この差をどう見るかは後半で整理します。
口コミ・評判は? 発売直後のリアルな評価
まず正直にお伝えすると
**国内の購入者レビューは、まだ十分に出そろっていません。**発売から日が浅いためです。ここでは先行して実機を使った海外レビュアーの評価を中心に、判断材料を整理します。
良い評価:「ランニングとの相性がいい」
海外レビュアーが日々のランニングで使用したところ、耳をふさがないため車や人の気配を把握したまま音楽を聴ける点が高く評価されています。周囲の安全を確認しながら走れるのは、カナル型では絶対に得られない体験です。
また、**「エントリー向け/フィットネス用として素晴らしい」**という総評も出ています。音のクリアさについても、他機種と直接比較しなければ十分に良いという評価。家事をしながら、スーパーの通路を歩きながらといった用途なら、迷わず勧められるレベルだとしています。
良い評価:「低音がしっかりある」
イヤカフ型の宿命的な弱点が「低音の薄さ」です。耳をふさがない以上、空気が逃げてしまうため、どうしてもスカスカに聞こえがち。
CMF Clip Proは10.8mmのデュアルマグネットドライバーと「ウルトラベーステクノロジー」でここを補強しており、**レビューでも「音に厚みを感じさせるだけの低音はある」**と評価されています。
気になる評価①:交通量の多い道では音量が足りない
ここが最大の注意点です。
海外レビュアーは**「交通量の多い道路脇を走ったとき、音楽やポッドキャストは聞こえたが、もう少しだけ音量が欲しかった」**と指摘しています。オープンイヤー型は原理的に外音と音楽が混ざるため、騒音下では不利になります。
**幹線道路沿いを走る人、地下鉄で使いたい人には向きません。**この一点は、購入前に必ず確認しておくべきポイントです。
気になる評価②:ケースへの収まりに少しクセがある
充電ケースへのイヤホンの収まり方について、細かい不満が挙がっています。実用に支障が出るレベルではないものの、毎日触れる部分なので気になる人はいるかもしれません。
気になる評価③:音質そのものはEar (3a)に及ばない
**「Clip ProとEar (3a)を直接比較すると、Ear (3a)のほうがはるかに良い音がする」**というのが海外レビュアーの率直な評価です。特に低音の深さと厚みでは、カナル型の[Nothing Ear (3a)]に軍配が上がります。
ただしこれは**「構造の違いによる当然の結果」**であって、Clip Proの欠陥ではありません。音を耳の中に閉じ込められるカナル型と、外気に開いたオープンイヤー型では前提が違います。
気になる「音漏れ」は実際どうなのか
イヤカフ型を検討する人が最も心配するのがここでしょう。
構造を理解しておくと判断しやすくなります。Clip Proのドライバーは耳の外側のくぼみ(耳甲介)に乗る形で音を届けます。耳栓のように密閉するわけではないので、音漏れは「ゼロ」ではありません。
目安としてはこう考えてください。
- 自宅・在宅ワーク → 問題なし(そもそも音漏れが問題にならない環境)
- カフェ・オフィス → 常識的な音量なら実用範囲
- 静かな図書館・満員電車 → 避けたほうが無難
そして重要なのは、音漏れが起きるほど音量を上げる場面は、そもそもこのイヤホンの得意分野ではないということ。静かな場所で控えめな音量、というのが本来の使い方です。
通話性能は価格以上:VPU搭載の「クリアボイス」
意外な強みがここです。
左右のイヤホンにそれぞれ2基ずつのHDマイク(合計4基)を搭載し、さらに**VPU(ボイスピックアップユニット)**という骨の振動を検知するセンサーを組み合わせています。
仕組みはこうです。マイクが「自分の声」「風切り音」「周囲のノイズ」を検知する一方、VPUが顎や耳道の微細な振動を電気信号に変換して**「本人が発している声だけ」**を特定する。結果として、人通りの多い道でも風の強い屋外でも、相手には自分の声だけがクリアに届く、というものです。
在宅勤務で急に電話がかかってくる人、外を歩きながら通話する人にとっては、12,800円という価格を考えると相当にありがたい装備です。
で、Clip ProとEar (3a) どっちを買うべき?
同じNothingグループ、価格差3,000円。判断基準は音質ではなく「使う場所」です。
CMF Clip Proを選ぶべき人
- 在宅勤務中に、インターホン・宅配・家族の声を聞き逃したくない
- ランニング・ウォーキングの習慣があり、周囲の安全を確認しながら聴きたい
- 家事や育児をしながら**「ながら聴き」**したい
- カナル型の耳の圧迫感が苦手
- 会話を録音する機能にむしろ抵抗がある
Nothing Ear (3a)を選ぶべき人
- 通勤電車での使用がメイン(ノイズキャンセリングが必要)
- 音質を最優先したい。特に低音の量感を重視する
- 会議やオンライン商談の録音・文字起こしを活用したい
- 静かな環境で音楽に没入したい
迷ったときの判断軸
「耳をふさぎたいか、ふさぎたくないか」——極論、これだけで決まります。
音質はEar (3a)、生活のしやすさはClip Pro。どちらが上位・下位という関係ではなく、用途がまったく違う別ジャンルの製品だと考えてください。
なお、両方揃えても28,600円です。「平日の在宅ワークはClip Pro、通勤日と集中したいときはEar (3a)」という使い分けは、実は理にかなった選択でもあります。
発売日・価格まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売日 | 2026年8月15日 |
| 価格 | 12,800円(税込) |
| ブランド | CMF by Nothing(Nothingのサブブランド) |
| 位置づけ | CMFブランド初のクリップ型オープンイヤー |
CMFはNothingの弟分にあたる低価格ブランドで、**「Nothingらしいデザインを、より手の届く価格で」**という立ち位置。今回のClip Proは、そのブランド初のクリップ型という節目のモデルでもあります。
まとめ:これは「安いイヤホン」ではなく「別ジャンルの道具」
CMF Clip Proを、1万円台前半のワイヤレスイヤホンとして音質だけで評価すると、たぶん物足りなく感じます。同価格帯のカナル型のほうが、音は良い。それは間違いありません。
でも、このイヤホンが解決するのは**「音質の悩み」ではなく「生活の悩み」**です。
インターホンが聞こえない。子どもに呼ばれても気づかない。走っていて後ろの車に気づけない。耳が痛くて1時間で外してしまう——そういう問題を12,800円で解決する道具として見たとき、評価は一変します。
騒がしい場所での音量不足という明確な弱点はあります。そこさえ許容できるなら、在宅勤務とランニングを両立する人にとっては、かなり刺さる一台と言えるでしょう。
※価格・仕様は執筆時点の情報です。最新の価格や在庫状況は販売ページでご確認ください。
